2018-11-16

県展市展と透明水彩の入賞の審査基準についての考察

透明水彩と公募展

透明水彩

芸術の秋。趣味で水彩画を描かれている皆さんは年に一度の作品を応募する機会である県美術展(県展)と市美術展(市展)にご出品される方もいらっしゃるでしょう。そして水彩画の皆々様が感じておられる疑問「透明水彩は入賞するのか?」について考えてみました。

出品サイズと透明水彩

地方自治体の美術公募展、県展では大体F100号まで、市展ではさらにそれより小さいサイズが絵画での応募条件に設定されていると思います。参考までに競争が激しいとネットで話題のさいたま県展では応募サイズが何とF50まで、しかも出品料が3,000円もするのです!あんなに小さいサイズなのに激戦だなんて・・・趣味の公募展といえども競争に見合った応募規定ではないように思います。

さて、透明水彩での応募となると、せいぜい無理してもF30号程度が精一杯なのではないでしょうか。それ以上のサイズとなると、一般的な透明水彩の絵筆では作業がやりづらくなると思います。

透明水彩のライバルである、油絵は趣味でも大体がF100号前後で応募されますから、大画面と比べると見劣りしてしまいそうになります。

もしも「感覚第一で審査が行われる公募展」であるならば「小さな紙に描かれた透明水彩は入賞に不利」といえましょう。

土俵は「表現のフィールド」ですから最大面積を使ったほうが目立って有利なのは今の日本の公募展の(残念な)現状であることに間違いありません。

ですから油絵部門と透明水彩部門を分けない限りは、透明水彩での出品は不利に働きます。

入賞と透明水彩

私が毎年観察した限りでは、市展レベルでも透明水彩での入賞はやや危ういと感じていますが一定以上のレベルに達すれば無理ではないと思います。県展では相当塗りこまないと透明水彩での受賞は難しいです。残念ながら手数の多さがある程度ないと入賞しない印象があります。どれだけ作品に手をかけ、どこで上手に抜いているか、そういったところが県展では見られています。そして光の扱い方についても割とシビアに見る審査員もいます。

色と光、画面でのバランスは基本中の基本です。

あっさり系はどれだけ描き込んでも趣味の公募展では無視されやすい傾向を感じます。

また、偶然性についても審査の範囲内であるといえます。素人が偶然いい絵が描けた。それが偶然だとしてもしっかり評価されています。

似たような色の中でもいろいろな色調を使わないと評価を得るのは難しいかと思います。

県展は日展系に合わせているというか、そっち系の審査員が来る傾向があるので、審査基準もアカデミックな基準を満たすことが条件になってくると思います。

残念ながら透明水彩や洋版画の専門家が県の美術展や市の美術展の審査員になることはレアケースえましょう。なぜなら応募のほとんどが油絵なので、審査員は油彩に理解のある人を呼んでくる必要があるからです。審査員に透明水彩の技術があっても、それはあくまで下絵のスケッチとしての技能であり透明水彩がお商売のメインである方は少ないと思います。

私の個人的な考えとしては、もしも県の展覧会で透明水彩で入賞を目指すのであれば、作品が売れるレベル、全国の公募展に入選するレベルまでいかないと難しいのではないかと思います。作品を見た実感ですが、審査員は透明水彩画での入選者に対し、あなたは(全国の)団体展レベルの方ですか?と質問なさっておられたことが印象的でした。

なので、もしも県展で入賞を狙うなら、団体展に応募して落選した作品を応募するつもりで挑まないと、趣味での入賞は難しいかと思います。

そして県展の入賞者ですが、団体展での入選レベルが基準となっていることは、もはや間違いありません。私も休日返上で朝から晩まで家にこもって数十日かけて相当がんばりましたが県展で入選が精いっぱいでした。しかし入賞している人は、芸術で生計を立てようとしている人、もしくは仕事を辞めても芸術家の端くれとしてそこそこやっていけるレベルの人が確かに含まれていました。その方々は知り合いの知り合いなんですが(笑)

逆に地元で絵画教室をやっていて地元のみで「画家」で名が通っている人は入選どまりの人が何名かいらっしゃいました。たまに賞を貰っていたようですが、美術学校を出ても入選・・・日曜画家私と同じ評価でした。それなら私も自称画家って言えなくないですか?私は死んでも画家と呼ばれたくないですけどね!!!